無欠の豊かさ

説教要旨（1月23日 朝礼拝より）
コリントの信徒への手紙二 1:4-9
牧師 藤盛勇紀

　パウロは感謝を述べますが、この感謝はコリントの信徒たちに対してではなく、「わたしの神に」対する感謝、神がコリントの信徒たちに与えてくださった恵みへの感謝です。パウロはこの手紙で多くの深刻なコリント教会の問題を取り上げていきます。「これでも教会か、これでもキリスト者か」と言いたくなるような呆れるほどの問題が噴出し、病膏肓に入る深刻さですが、パウロはそんなコリント教会にすでに与えられている恵みを感謝し、その恵みの事実から、問題の山に分け入って行きます。
　私たち自身、様々な問題を抱えています。「いったいどこから手をつけたらよいのか」と途方に暮れることもあります。どこから？　それはハッキリしています。すでに与えられた恵みから、です。だから「いつでも」感謝からとなり、途方に暮れる日々の中でも「常に」喜び喜べとパウロのように言えるのです。まず恵みを確かめ感謝するところから、初めて応答としての言葉・知恵・行動が生まれてきます。具体的な祈りが生まれ、知恵が生まれ、工夫となって現れてきて、一つ一つ片付けて行こうとする忍耐も生まれます。
　常に「神の恵み」が先行しています。「それは分かっている」などと言わず、思わず、パウロがしているように、まず言葉をもって恵みと感謝を表すことです。なぜなら、自分がまず口にする言葉、まず思う言葉が、次の言葉や思いを方向づけてしまうからです。たとえば一日の始まりにどんな言葉を聞くか、どんな言葉を聞いて過ごすかは決定的です。もし、不安なため息から始めたり、不平から始めたり、怒りから始めたりすれば、それに続いてどんな思いや言葉が出てくるか、想像に難くありません。
　朝鏡を見たら、「あなたはすでに恵まれ、祝福されている。おめでとう」「私の魂よ、主の霊によって潤されよ」と、まず自分を祝福しましょう。主の霊によって潤され健やかにされた私の魂が、私の体を動かすのですから。
　パウロは、今は問題の多いコリント教会について「キリストに結ばれ、あらゆる言葉、あらゆる知識において、すべての点で豊かにされています」と言います。これは皮肉ではなく、実際にコリント教会が言葉と知識において豊かにされたのです。ただ、それがコリント教会の問題の種ともなってしまいました。言葉や知識の用い方を間違い、位置や方向を見失って、混乱と無秩序に陥っていきました。それはこの手紙の中で取り上げられていくことになります。
　「キリストについての証しがあなたがたの間で確かなものとなった」と言うように、パウロがコリントの町にキリストの福音を伝え、コリントの信徒たちは真実にそれを受け入れ信じて、彼ら自身も福音を伝え、証しをし、伝道しました。確かに「賜物に何一つ欠けるところが」なかったのです。
　福音が伝えられ受け入れられるところで、キリストの福音が命となり力となります。コリントの信徒たちも生かされ、用いられ、動き出し、そのダイナミックな動きの中で「言葉」の賜物も「知識」の賜物もより豊かにされていきました。だから、み言葉に基づいて語り出し、動き出し、生かされている自らを晒し、示して、キリストを証しすることで、豊かさから、さらに豊かにされていきます。「持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる」とイエス様が言われたように、恵みはあふれ出るのです。
　「神は真実な方です。この神によって、あなたがたは神の子、わたしたちの主イエス・キリストとの交わりに招き入れられたのです」。私たちをキリストとの交わりに入れてくださった神は「真実な方」です。だから、いつでも、どこでも、この方が与えてくださる恵みから始められるのです。