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頼るべき一人の方

説教要旨(9月12日 朝礼拝より)
イザヤ書 2:6-22
牧師 加藤英徳

 福音書に目を向ける時、ファリサイ派の人々が「こうあるべき」と突き進んでいる姿を知らされます。同じように私たちも「こうすることがよい」とか「こうすべき」或いは「こうでなければならない」という思いに駆られて突き進む事があります。
 与えられた聖書の箇所でイザヤが語りかけている人々も、まさにこの時「思い込みからくる見当違い」の状態の只中を突き進んでいました。近隣との間で緊張状態にあった彼らは。自国滅亡という危機的な状況を自力で乗り切ることが出来ないと判断し、大国に貢物を送って支援を求め、目の前の脅威を乗り切ります。
 大きな国の後ろ盾を受け滅亡の危機を脱した彼らでしたが、貢物を送り支援を受けたという事実は相手国の支配を自ら進んで受ける事を意味しました。戦いに負け支配されることを嫌い、独立の為他国に助けを求めた彼らは、当初の願い通り戦いには負けませんでしたが支援を求めた国の属国となったのです。
 その結果、当時の指導者たちは神様の神殿の前に異教の神の祭壇を設置し、律法で禁止されている偶像を持ち込んで支配者への忠誠を表現しました。また、占い師や魔術師の行う儀式を通してその国の風習を取り入れたのです。
 そうやって支配国の風習を真似ながら時は過ぎていったことで、それらの振舞は自然と身につき、いつしか当たり前になり、結果として彼らは自分たちの神様以上に異教の神へと思いが向けられていったのです。一連の出来事によって彼らの中で起こった事。それは国が滅びないため「こうしなければならない」「こうすることが正しい」という思いで突き進んだ結果、神様を見失うという事でした。
 だからそんな同胞に向かってイザヤは「こうでなければならない」と見当違いをしているあなたたちを神様が見捨てたのだと言い、神様にはそんな自分勝手な彼らを赦さないでくださいと告げるのです。
 イザヤの言葉は続きます。そんな彼らに主の日が望む時、神様の怒りの前に私たちが価値を見出す高いレバノン杉や山、そして丈夫な城壁は価値を失い無意味な事に気が付く、つまりその日が来る時、意味のないものを大事にしていたのを知るようになるというのです。そして自ら引き寄せた罪が神様の前に明らかにされる、だからその時が訪れたら、あなたたちは神様の怒りを逃れるため岩や洞穴の中に隠れるようにというのです。
 聖書の出来事を振り返る時、神様から逃れられないことを私たちは知っています。イザヤもその事を知らなかったはずはありません。にも拘らず逃げる事を進めるイザヤの言葉は彼らの滅びを心から望んでいるようにも聞こえてきますが、イザヤがここで本当に彼らに告げたかったのはそうではありません。
 本位とは真逆の表現を用いてイザヤが告げたかったのは「思い込みが元になっている見当違いから離れて、本当に頼るべき神様の元に戻りなさい」です。私たちの髪の毛一本迄も残らず知っている、それほどまで私たちに注意を払ってくださる神様と向き合えという事です。神様と向き合う事で自分たちを縛り付けている「こうあるべき」や「こうでなければならない」の思いから解放されるようにという事なのです。
 示された箇所に目を向けながら今に思いを寄せる時、目の前の状況に私たちの心は「これが出来ないあれも出来ない」と下向きになっているかもしれません。そして「どうして」というつぶやきに縛りつけられているはずです。ですがそんな私たちの全てを神様は知っておられます。そして、私たちが御自分の方に向き直るよう、常に私たちの働きかけてくださっているのです。

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