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あなたの光、あなたの王

説教要旨(12月19日 クリスマス礼拝より)
マタイによる福音書 2:1-12
牧師 藤盛勇紀

 マタイが記すこのクリスマスの物語は、一般に「東方から来た博士たち」と呼ばれています。彼らはイエス様が生まれてからしばらく経って、ベツレヘムのある家で幼子イエスを見つけ、礼拝しました。彼らは何者なのか不明で、この後二度と登場しないのですが、「王」を求めてやって来ました。自分の国にも王がいたでしょう。ところが彼らはなぜか「ユダ人の王」として生まれた方が真の王であることを知ったのです。ユダヤ人からすれば異邦人は蔑まれる存在。しかも彼らは聖書が禁じる占いなどをする怪しい連中。そんな人たちが「ユダ人の王」を求めてやって来たというのです。
 これはおとぎ話ではありません。現代に生きる人間も、王を探し求めています。私たちは今年もコロナに明け暮れ、あらゆることがコロナと無関係ではあり得ませんでした。まさにコロナに支配された世界を経験しています。これからどんな時代になるのか。世界はどんな力によって動かされ、いったい何が世界を支配するのか。私は何を頼りに生きればよいのか、私の人生を決定づけるものは何なのか。不安の中で誰もがそれを知りたいのです。だから毎朝必ず全てのテレビ局が占いをやっています。
 東方の博士たちは、気象や天候、国際情勢の行方も占い、政策決定に影響を与える高官だったとも考えられます。なのになぜ、地位ある生活を捨てて「ユダヤ人の王」を求めて旅立ったのか。あの星が彼らに何を示したのか。それは、自分の全てを献げてもよい「真の王」の誕生でした。
 世の力も栄枯盛衰も彼らは知っています。その空しさ儚さを知っているからこそ、真の王を求めていた。だから、その求めに応えるように真の神が示された特別なサインを見逃さず、それを捕らえたのでしょう。
 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか」。この問いに、ヘロデ王もエルサレムの人々も皆、不安を抱きます。「ユダヤ人の王」とは一体誰だ?新しい王を担ぐ勢力が起こったのか?新たな混乱を予感させる、不吉な問いでした。
 21世紀の今日も世界は混乱し、誰もが不安です。相変わらず不安なのは真の王の誕生、到来を知らないからです。「王はどこに?」。これは人間の根源的な問いなのです。
 博士たちは、目的地も分からないまま、大胆にも旅に出ます。「真の王が生まれた」、それだけを確信して旅立ったのです。無謀な旅と思われるかも知れません。しかし、博士たちにはしるしの星が与えられています。星に導かれ、まずはヘロデの宮殿を尋ねます。当然です。まさか、真の王が家畜小屋で生まれた貧しい乳飲み子だなどとは、全く思いもしなかったはずですから。
 しかし、彼らが見つけた王は、貧しく名も無い夫婦が旅先で産んだ幼子。もし彼らが、世の支配者が持つような力や富や栄誉を期待して来たのだとしたら、幼子の貧しさを見て愕然とし、絶望したでしょう。しかしそうはならなかった。彼らを導いた星がここに「止まった」からです。「ここだ!この幼子だ!」と知らせたのです。人生の意味を探す旅、王を探す旅、自分を探す旅はお終い。この幼子が「あなたの主、あなたの命、あなたの道、真理」だからです。
 クリスマスはこの方、私たちの王にして、命の光であるお方が「あなたのために」すでに来られたことを知るべき時です。「あなたの」主がおられる。「あなたの」命、人生がここに、この方にあるのです。
 私たちが生きるこの世は、終わりの時まで悩みの尽きない世であり、なお闇の続く世です。しかし、諦めて生きるべき世ではなくなりました。どんな時代になっても、真の王にして命の主なるお方と「共に」生きる、希望の世です。だからA.D.(Anno Domini:主と共に)と年を数えながら、私たちの主と共に歩むべき世なのです。