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神の力、神の知恵

説教要旨(2月20日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 1:18-25
牧師 藤盛勇紀

 前回も読みました「十字架の言葉」は、恵みを伝える言葉でもあります。しかし、恵みを受けない人にとっては意味の無い「愚か」なものです。「わたしは知恵ある者の知恵を滅ぼし、賢い者の賢さを意味のないものにする」(イザヤ29:14)。「知恵ある者の知恵」「賢い者の賢さ」を、神ご自身が打ち破り、退ける。これは、十字架の言葉を信じた者自身が実際に救われて知っている事実、神の力に生かされている事実です。
 「知恵のある人はどこにいる。学者はどこにいる。この世の論客はどこにいる」。「知恵のある人」とは学識ではなく、何が人を生かすのか、何が幸いにするのかを自らのこととして知って生きている人です。しかしその知恵でさえ、「十字架の言葉」による知恵とは比べようがありません。「学者」は哲学者でもありますが、ここでは律法学者を初め聖書や神に詳しい専門家でしょう。しかしこれも「十字架の言葉」によって救われて生きている者と比べたら、聖書も神も知っているとは言えない無知な者です。学者は「この世の論客」ですが、「自分の知恵で神を知ること」ができず、救いと命に結びつく議論はできません。むしろ十字架を愚かなものとして人間を誇り、命に至ることのない、「滅んでいく者」の象徴です。
 なぜ人は「知恵」によって神を知ることができないのか。それは、神と人とを隔てているものの故です。人は誰でも「知りたい」という欲求・衝動を持っていますが、本当のところ何を知りたいのか。結局は自分の存在の意味、生きていることの意味でしょう。なぜ生きているのか、なぜ無ではなく存在しているのか、という問いや驚きから、自分が置かれている世界の探究、学問・科学の根本動機ともなります。それで人間は、世界や物事を知るのと同じように神をも知ろうとしますが、無理です。神は存在の根源、人格的な方です。事物を知るように知ることなど不可能です。神は霊であり命であり愛です。愛と信頼によって生きることで、霊によってのみ知り得ます。「それは神の知恵にかなっています」。だから、世の人の力と知恵は無力なのです。
 「そこで神は、宣教という愚かな手段によって信じる者を救おうと、お考えになった」。「お考えになった」とは「喜んだ」「気に入った」という言葉です。「宣教という愚かな手段によって人を救う」ことを神は喜んでお決めになっておられます。「宣教」は「説教」「メッセージ」でもあります。愚かでまどろっこしく、遠回りな私たちの宣教によって人を救うことを、神が喜ばれます。
 当時の人間の知恵の代表であるユダヤ人とギリシア人は「しるし」を求め「知恵」を探します。いずれにせよ人間の理性が全ての判断の基準となり、人間が至高の存在となります。そんな人間にとって「十字架につけられたキリストを宣べ伝え」る「十字架の言葉」は、つまずかせるもの」「愚かなもの」。蹴っ飛ばしてやるもの、くだらないものです。それはそうでしょう。宣教が何を語るかと言えば、神が人となり、人類の罪を負って人間に捨てられて死んだと言うのですから。まして、そのように十字架に死んだイエスが復活して、いま生きておられると聞いたらどうでしょう。
 パウロがアテネの哲学者たちと討論した時、大いに注目されましたが、復活の話になった途端、「ある者はあざ笑い、ある者は、『それについては、いずれまた聞かせてもらうことにしよう』」という反応が返されました(使徒17:32)。これが世の人々の判断であり、知恵です。
 しかし、「神の力」を自ら知った者、「召された者には、神の力、神の知恵であるキリストを宣べ伝えて」います。救われて神を知った者は、「召された者」とされて、「キリストを宣べ伝え」、それを聞いています。ここに、「神の力、神の知恵」が、事実として現されているのです。
 

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る