ホーム | 説教 | 説教(2023年度) | メシアの伝道

メシアの伝道

説教要旨(10月22日 朝礼拝より)
マタイによる福音書 4:12-17
牧師 藤盛勇紀

 メシアの先駆者、洗礼者ヨハネの務めが終わったことを知ったイエス様は、故郷のナザレを離れ、ガリラヤ湖半のカファルナウムに住まわれました。カファルナウムは経済的にも軍事的にも要衝です。徴税人だったマタイも阿漕な仕事をし放題だったでしょう。しかしマタイは、イエス様の移動は預言者が語ったことの成就なのだと言います。「異邦人のガリラヤ」。むかし北イスラエル王国が滅ぼされた時から、この他は民族的・宗教的に混淆状態になります。以来、純粋なユダヤ人と言える人がいなくなり、「異邦人のガリラヤ」、「暗闇に住む民」「死の陰の地に住む者」とさえ言われるほどに絶望的な地でした。
 しかし、そこに光が差し込んだ! これはマタイ自身の経験でもありました。皆さんはどうでしょう。暗闇ではなかったですか。十字架の死を遂げたイエスを知り、あなたのために御子を惜しまず死に渡された方があなたの父、「アッバ」と呼べるお方だと知ってからどうですか。それ以前の生活が何不自由ない生活だったとしても、イエスを知り、この方の霊が私の内に住んでいてくださることを知ってから。どんな時でも神を「アッバ」と呼べる、そんな自分となった今から振り返れば、「暗闇の地に住んでいた私に、光が差し込んだ」と言えるのではないでしょうか。ならば、この東京のど真ん中も「異邦人のガリラヤ」でしょう。だからこそ、イエスによって希望を持って生きている人は、この地に出て行くべきなのです。命の光に差し込まれ、神の愛と完全な赦しと自由を知ったのなら。
 深く憐れまれる主は、「暗闇に住む民」を命の光に入れるために、深遠な計画と伝道戦略をもって、その働きを開始されます。そして、この働きのために、主に応えて生きる人々、主と共に恵みを味わって生きる人々が必要なのです。だから主はこの後、弟子たちを招かれます(18節以下)。
 「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と呼ばれたペトロとアンデレはすぐに網を捨てて従います。ヤコブとヨハネも「すぐに、舟と父親とを残してイエスに従った」。彼らはもともと洗礼者ヨハネの弟子。そして、大漁の奇跡を経験します(ルカ5:1~11)。その時ペトロはイエスの足元にひれ伏して言いました「主よ、私から離れてください。私は罪深い者なのです」。この経験の後、「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と主から招かれます。ただの田舎の漁師、しかも罪人の私をこの方は招いておられる。ペトロたちもマタイも、自ら弟子入りしたのではなく、イエスに招かれたのです。
 「網を捨てて」「舟と父親とを残して」。イエスに対する全面的な信頼です。これは幸いなことであり、何より嬉しく楽しいことです。主に従っても、どんな生活が待っているのか分かりません。しかしこの方なのです。この方の道を歩む。「献身」とも言いますが、献げたら全面的に用いられます。自分の力も経験も、個性や特性、変なクセも。これを知らないことは、空しくもったいないことです。
 主は私たちの罪を赦し、新しい命に生かすために必要なことの全てを、独りで成し遂げられました。しかし、この方とその御業を世の人々に宣べ伝えることは、ご自分が召した人々を用いてなさいます。「神は、宣教という愚かな手段によって、信じる者を救おうと、お考えになった」(1コリント1:21)。
 神はわざわざ私たちをお用いになります。手間がかかって効率が悪い。「愚かな手段」とは、私たち自身のことです。使徒パウロは自分を出来損ないだと言いました。出来損ないの私を、神は用いたいのです。
 深いご計画と戦略をもってなさったイエス様の活動の全ては、私たちのためです。ひねくれ切った徴税人、罪人の代表のようなマタイ、取り柄も無く名も無いただの罪人の漁師たち。彼らのために、主は死んでくださり、彼らを弟子とし、神の子とし、神にとってなくてはならない者となさいます。これは、他でもない私たち自身の経験です。

説教一覧(2023年度)

 
2023.4.2
霊で祈り、理性で祈る
2023.4.9
あなた方に平安あれ
2023.4.16
全生涯続く喜び
2023.4.23
秩序と平和の神
2023.4.30
熱意とバランス
2023.5.7
神の恵みが現れた
2023.5.14
何を求めているのか
2023.5.21
最も惨めな者
2023.5.28
アッバ、父よ
2023.6.4
一人の一人による新しい命
2023.6.11
裁くことからの自由
2023.6.18
聖霊によって語り、聞く
2023.6.25
復活の希望による力
2023.7.2
最後のアダムは命の霊
2023.7.9
死よ、お前に勝利はない
2023.7.16
伝道の幻と戦い
2023.7.23
天地を結ぶ
2023.7.30
雄々しく、強くあれ
2023.8.6
マラナ・タ
2023.8.13
憐みに胸を痛める神
2023.8.20
イエス・キリストの系図
2023.8.27
イエス・キリストの誕生
2023.9.3
あの方の星に導かれて
2023.9.10
希望への退避
2023.9.17
天の記録
2023.9.24
神が近づいた
2023.10.1
壮大な業の開始
2023.10.8
神の前に一人で立つ
2023.10.15
悪魔に対抗する道
2023.10.22
メシアの伝道
2023.10.29
神の国は進む
2023.11.5
イエスに従う者たち
2023.11.12
神の義と愛
2023.11.19
神の愛に包まれた者
2023.11.26
主の奇蹟の時
2023.12.3
大いに喜べ
2023.12.10
ヒゼキヤの信仰
2023.12.17
地の塩、世の光
2023.12.24
飼い葉桶のメシア
2023.12.31
神の国に入る者
2024.1.7
なぜ腹を立てるのか
2024.1.14
永遠なる御父の宮
2024.1.21
祝福された関係
2024.1.28
主の真実を信じる
2024.2.4
太陽を昇らせ、雨を降らせ
2024.2.11
安心して行きなさい
2024.2.18
人の報いと神の報い
2024.2.25
あなたが祈るときには
2024.3.3
天の父よ
2024.3.10
いのち注ぐ恵み
2024.3.17
神の国を味わう
2024.3.24
十字架の神の御名
2024.3.31
そこで私に会うことになる