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安心して行きなさい

説教要旨(2月11日 朝礼拝)
ヨハネによる福音書 8:1-11
牧師 小宮一文

 姦淫の罪を犯した女性をめぐってイエスさまとファリサイ派の人びととの間に起きた出来事です。ある女性が自分の夫以外の男性と男女として会っていました。その現場をファリサイ派の人びとが捕らえ、その女性をイエスさまのところへ連れてきました。ファリサイ派の人びとには目的がありました。ここでイエスさまが「律法の通りにせよ」と言ったなら、ローマの政府の許可なしに死刑をおこなうことは禁じられていたので、「この男はあなたがた政府の決定を無視して勝手なことをしようとしています」と訴えることができます。反対に「そんなことしてはならない」と言ったなら、「この男は律法について教えておきながら自分は守る気がない。この男は嘘の教えを教えている」と人びとに言いふらすことができます。どう答えてもファリサイ派の人びとの願っている通りになります。
 ここでイエスさまは地面にかがみこみ、指で地面に何かを書き始められました。これについて学者の人たちはいろいろな説明をしてくれます。旧約のこういう言葉を書いていたのだ、とか、裁きを用意しているのだ、とか。しかしそのような説明にあまり心は惹かれませんでした。むしろ地面にうずくまって、かがみこんで、何かを書いているという、ヨハネがそのままに伝えているイエスさまの姿に私は心が惹かれました。
 それを見た人たちはまず笑ったと思います。「おいおい、どうしちゃったんだ。答えに行き詰りすぎてついに頭でもおかしくなっちゃったのか」と。しかし私が心惹かれるのは、その中で、だんご虫のように身をかがめて、黙々と地面に何かを書いている、そのように小さくなっているイエスさまの姿です。
 讃美歌21の288番の歌詞には「十字架につけよと怒りさけぶ」とあります。54年版では「十字架につけよとくるいさけぶ」。この「怒りさけぶ」「くるいさけぶ」いうのは、精神に異常をきたした人のことではありません。正常で正しい人のさけびなのです。「わたしの正義はおこなわれなければならない」という人のさけびです。この歌詞の中にも、身をかがめて小さくなっているイエスさまがいます。人間の正義が最も大きくなったとき、神は最も小さくなって、文字通りだんご虫のように小さくなって死んだのです。
 私自身そういう人間だったので分かるのですが、怒りさけぶ人というのは間違いなく正しい人です。一方、罪人といわれる人たちに怒りさけぶ人はいません。それは、罪人といわれる人たちが自分には誇れる正しさ、義はないということをよく知っているからです。
 しかしそれを忘れるとき、人間の義は神をも殺すということをイエスさまの十字架は明らかにしました。自分を罪人と思えないことが罪です。そうであるなら、イエスさまのこの言葉はそういう罪から私たちを救う言葉であると思います。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」。
 罪人になりなさい、ということです。そして楽になりなさい、と言っているのです。このとき、イエスさまはこの女性だけでなく、ファリサイ派の人びとも憐れんでおられたと思います。正義を引っ込めることができない正義中毒のような生き方を捨てさせてあげたかったのだと思います。そして「自分はだめな罪人だ」と明るく諦めて、喜びながら生きることを願われたと思います。
 「行きなさい」っていいなと思います。罪が赦されるとは「行きなさい」と送り出されることです。「顔をあげて行きなさい、もう神さまから離れてはだめだよ」とイエスさまが送り出してくださるのです。
 最後にその場にイエスさまがひとり残りました。私はその風景に心を打たれます。ここで最後に残ったイエスさまは、これらの人びとの罪を全部自分のものとしてお引き受けになったのだと思います。そのためにイエスさまはすべての人を送り出して、最後にひとり残られました。そうやって「行きなさい」と送り出された私たちなのです。
 

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