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太陽を昇らせ、雨を降らせ

説教要旨(2月4日 朝礼拝)
マタイによる福音書 5:38-48
牧師 藤盛勇紀

 「悪人に手向かうな。右の頬を打たれたら、左の頬を無目よ」「誰かが一ミリオン行くよう強いるなら、二ミリオン行け」。これでは悪人の言いなり、悪を助長することになる、と考える人も少なくないでしょう。しかし、故なく叩かれ、強いられ、損害を与えられる。古代社会では珍しくありません。無力な民衆は、ただ忍耐して従うか、怒りにかられて反抗して殺されるか。ぶつけようのない怒りや復讐心を内にたぎらせて生きることにもなるでしょう。「目には目を、歯には歯を」との律法の規定は、人間の底なしの復讐心や怨念による報復の連鎖を断ち切るのです。
 イエス様は、そこで神が本当に求め、願っておられることは何かを示しておられます。ローマの兵士が、そこにいる人に「おい、お前。これを持ってあそこまで行け」と強いることもあったでしょう。「強いる」という言葉は27章の有名な場面で使われます。イエス様が十字架を担がされて刑場まで歩いて行きます。過酷な鞭打ちですでに体はぼろぼろ。途中で力尽きてしまいます。野次馬の群衆の中に、たまたま通りかかった「シモンという名前のキレネ人」が兵士の目にとまり、彼に十字架を「無理に担がせた」。この「無理に」は「強いて」と同じ言葉です。
 イエス様の十字架刑は過越祭の時でした。世界中からユダヤ人が巡礼に来ています。キレネから来たシモンは、イエスの傍らで十字架を担ぎ、群衆の目に晒されて、自分も死刑囚のように歩いて行く。「なんでこんなヤツのために」と、イエス様を恨んだでしょう。たまたま十字架を担がされたシモンについて、マルコは詳しくこう記します。「アレクサンドロとルフォスの父でシモンというキレネ人」。通りがかりの人なのに、息子たちの名前まで記録されている。あの後で、なぜかシモンはイエスを主と信じ、福音書が記される頃には、彼の息子たちも教会の中で誰もが知る存在となっていたのでしょう。使徒パウロもローマ書の最後の挨拶でこう記しています。「主に結ばれている選ばれた者ルフォス、およびその母によろしく。彼女はわたしにとっても母なのです」。息子ルフォスもその母つまりシモンの妻も、あのパウロを助ける働きをしたのだと思われます。
 シモンがあの時、死刑囚イエスが誰だったのかを知っていたとしたら、どうでしょう。生ける神の子イエスが、私のために死んでくださる。私はその十字架を担ぎ、主と共に歩んで行く。「主よ、私はこの耐え難い屈辱の中でも、あなたと一緒なら、どこまでもどこまでも行きます」と言えたのではないでしょうか。「私はあの時、『なぜこんな惨めな男と』と、ただあなたが忌々しかった。『イエスよ、お前はさっさと死ねばいい』と心の中で叫びながら歩きました。しかしあなたは、そんな私のために黙々と死への道を歩まれました。私だけでなくあのローマ兵のためにも、いや全ての人のために」。
 「父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる」。シモンは後に、この言葉を聞いたでしょう。そして、イエス様が十字架の上で、「敵を愛し、自分を迫害する者のために」祈られたことも知ったでしょう。
 到底実行不可能で理解不能と思われる言葉は、このお方の招きなのです。「あなたの本当の恥は私が負った。あなたの呪いは私が受けた。あなたへの裁きはもう私に下された。あなたが耐え難いと辱を受ける時、私も負っているんだ。だから、私と一緒に歩かないか」。
 このお方が、「あなたがたも完全な者となりなさい」と言われるのです。「完全」という言葉は、完璧で非の打ち所がないということではなく、「終わりに達した」「仕上げられた」という意味の言葉です。私たちは死ぬまで不完全で、未完成のまま人生を閉じます。しかしイエス様は、そんな私たちと一緒に生きてくださいます。どこまでも私たちと共に歩んでくださって、「天」まで一緒なのです。私たちはこのお方と一緒だから、「完全な者」になります。これが主の約束、招きです。

説教一覧(2023年度)

2023.4.2
霊で祈り、理性で祈る
2023.4.9
あなた方に平安あれ
2023.4.16
全生涯続く喜び
2023.4.23
秩序と平和の神
2023.4.30
熱意とバランス
2023.5.7
神の恵みが現れた
2023.5.14
何を求めているのか
2023.5.21
最も惨めな者
2023.5.28
アッバ、父よ
2023.6.4
一人の一人による新しい命
2023.6.11
裁くことからの自由
2023.6.18
聖霊によって語り、聞く
2023.6.25
復活の希望による力
2023.7.2
最後のアダムは命の霊
2023.7.9
死よ、お前に勝利はない
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伝道の幻と戦い
2023.7.23
天地を結ぶ
2023.7.30
雄々しく、強くあれ
2023.8.6
マラナ・タ
2023.8.13
憐みに胸を痛める神
2023.8.20
イエス・キリストの系図
2023.8.27
イエス・キリストの誕生
2023.9.3
あの方の星に導かれて
2023.9.10
希望への退避
2023.9.17
天の記録
2023.9.24
神が近づいた
2023.10.1
壮大な業の開始
2023.10.8
神の前に一人で立つ
2023.10.15
悪魔に対抗する道
2023.10.22
メシアの伝道
2023.10.29
神の国は進む
2023.11.5
イエスに従う者たち
2023.11.12
神の義と愛
2023.11.19
神の愛に包まれた者
2023.11.26
主の奇蹟の時
2023.12.3
大いに喜べ
2023.12.10
ヒゼキヤの信仰
2023.12.17
地の塩、世の光
2023.12.24
飼い葉桶のメシア
2023.12.31
神の国に入る者
2024.1.7
なぜ腹を立てるのか
2024.1.14
永遠なる御父の宮
2024.1.21
祝福された関係
2024.1.28
主の真実を信じる
2024.2.4
太陽を昇らせ、雨を降らせ
2024.2.11
安心して行きなさい
2024.2.18
人の報いと神の報い
2024.2.25
あなたが祈るときには
2024.3.3
天の父よ
2024.3.10
いのち注ぐ恵み
2024.3.17
神の国を味わう
2024.3.24
十字架の神の御名
2024.3.31
そこで私に会うことになる