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あなたが祈るときには

説教要旨(2月25日 朝礼拝)
マタイによる福音書 6:5-9
牧師 藤盛勇紀

 フォーサイスは『祈りの精神』の中で、人は生きるために食べ物が必要だが、祈りによって精神にも肉体にも力が与えられ、新たにされると言います。そして、神が与えてくださる賜物は人間を自由にすると。ただ、神からの賜物によって、常に新たにされなければ、自由そのものがわれわれを奴隷化するとも言います。無神論的実存主義者のサルトルが、「人間は自由という刑に処せられている」と言ったのを思い起こします。神との交わりの中で賜物をいただいて、初めて人間は人間となります。だから「最悪の罪は祈らないことである」とフォーサイスは言います。昔これを読んだ時、祈りの少ない私は責められ裁かれているような気になりました。もちろん、そういうことではありません。罪とは、生ける神と切れてしまっていること。その結果は死。祈らないことは死ぬことなのです。
 「キリスト者は祈らなければならない」とか「信仰者の務めだ」などということではありません。主は、「あなたがたは偽善者のようであってはならない。…彼らは既に報いを受けている」と言われます。前回も触れたところですが、「報い」とは何かをする時の目的や動機です。神は外に表れた行いをご覧になるのではなく、心をご覧になるのです。
 「…でなければならない」という圧力のような動機から祈るのは「偽善」です。「私はやってます」「祈ってます」と人に示すことになるからです。人に知ってもらった時点でお終いだと主は言われます。祈りを「しています」。それで人から良い評価を得る。それは、良い物を売って良い値で買ってもらう商売。だから既に報いを受けているのだと。
 「だから、あなたが祈るときは、奥まった自分の部屋に入って戸を閉め、隠れたところにおられるあなたの父に祈りなさい。そうすれば、隠れたことを見ておられるあなたの父が報いてくださる」と主は言われます。「あなたに必要なことは人とのやり取りではない。あなたを人として命を与えた父なる神との交わりによって、あなたは生きるべきなのだ。そこで人間になるべきなのだ」と。
 「あなたが祈るときは、奥まった自分の部屋に入って戸を閉め、隠れたところにおられるあなたの父に祈りなさい」。前回、これはあなたが一人になることだ、と言いました。一人になる時、神の前に一人の人として生きることでもありますが、実は、神の前に一人死ぬ、死への備えでもあります。ヨブは言いました。「私は裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう」。「そこ」とは母の胎ではありません。「主は与え、主は奪う」。私は主によって命を与えられ、世に存在する者とされた。裸で、つまり主のもとから一人で出てきた。だから一人で主のもとに帰るのです。
 もし、一人で主と交わることを知らなかったら、どう死ぬのかも分からないでしょう。「どう死ぬか」と言っても、原因のことではありません。《本当に一人で主のもとに帰る》、それを受け入れられないということです。それは「自由の刑に処せられた」人間の行き着くところです。
 主は「あなたがたの父は、願う前から、あなたがたに必要なものをご存じなのだ」と言われます。「だったら、なぜ祈る必要があるのか」と問う人もいますが、あなたにとって必要である以上に、あなたの神があなたを求め、あなたに祈ってほしいのです。「私は生きてあなたと共にいる。生きて私と交わり、私が与えるものによって生きよ。生きてほしいのだ」と、あなたの父が願っておられます。
 私たちはイエス様に結ばれて、神の子とする霊を注がれています。だから私たちはイエス様と共に、神を「アッバ」と呼びます。もう、お勤めのような祈りは必要ありません。生ける神との交わりが私たちを自由に健やかにします。祈ろうとしても祈れないこともありますが、聖霊が言葉にならない呻きをもって執り成してくださっています。祈れないなら「主の祈り」を祈ればよいのです。主の祈りを祈る時、「このように祈れ」と言われた主のみ言葉に従っているのです。

説教一覧(2023年度)

 
2023.4.2
霊で祈り、理性で祈る
2023.4.9
あなた方に平安あれ
2023.4.16
全生涯続く喜び
2023.4.23
秩序と平和の神
2023.4.30
熱意とバランス
2023.5.7
神の恵みが現れた
2023.5.14
何を求めているのか
2023.5.21
最も惨めな者
2023.5.28
アッバ、父よ
2023.6.4
一人の一人による新しい命
2023.6.11
裁くことからの自由
2023.6.18
聖霊によって語り、聞く
2023.6.25
復活の希望による力
2023.7.2
最後のアダムは命の霊
2023.7.9
死よ、お前に勝利はない
2023.7.16
伝道の幻と戦い
2023.7.23
天地を結ぶ
2023.7.30
雄々しく、強くあれ
2023.8.6
マラナ・タ
2023.8.13
憐みに胸を痛める神
2023.8.20
イエス・キリストの系図
2023.8.27
イエス・キリストの誕生
2023.9.3
あの方の星に導かれて
2023.9.10
希望への退避
2023.9.17
天の記録
2023.9.24
神が近づいた
2023.10.1
壮大な業の開始
2023.10.8
神の前に一人で立つ
2023.10.15
悪魔に対抗する道
2023.10.22
メシアの伝道
2023.10.29
神の国は進む
2023.11.5
イエスに従う者たち
2023.11.12
神の義と愛
2023.11.19
神の愛に包まれた者
2023.11.26
主の奇蹟の時
2023.12.3
大いに喜べ
2023.12.10
ヒゼキヤの信仰
2023.12.17
地の塩、世の光
2023.12.24
飼い葉桶のメシア
2023.12.31
神の国に入る者
2024.1.7
なぜ腹を立てるのか
2024.1.14
永遠なる御父の宮
2024.1.21
祝福された関係
2024.1.28
主の真実を信じる
2024.2.4
太陽を昇らせ、雨を降らせ
2024.2.11
安心して行きなさい
2024.2.18
人の報いと神の報い
2024.2.25
あなたが祈るときには
2024.3.3
天の父よ
2024.3.10
いのち注ぐ恵み
2024.3.17
神の国を味わう
2024.3.24
十字架の神の御名
2024.3.31
そこで私に会うことになる