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あなた方もここにいる

説教要旨(1月27日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 1:1-7
牧師 藤盛勇紀

 この手紙の著者はパウロ。宛先は「神に愛され、召されて聖なる者となったローマの人たち一同へ」(7)とあります。本来は、「召されて使徒となったパウロから」「神に愛され、召されて聖なる者となったローマの人たち一同へ」と1節から直接7節に続くのです。ところが、発信者と受取人の間が裂かれて、そこに大きな文章が挿入されています。その内容は、パウロが伝えてやまない福音を一言で示すものです。この手紙全体がイエス・キリストの福音について語っているのですが、パウロは自分の名前を記して、「ローマの人たちへ」と書こうとした時、両者の交わりを妨げている深く広い溝を改めて思わされたのでしょう。そして、この深い溝はイエス・キリスト以外に埋めることはできないのだと。
 パウロはキリストの福音のスケールの大きさを語ります。まず「この福音は、神が既に聖書の中で預言者を通して約束されたもの」であり、約束通り生まれた神の子、しかも死んで復活された神の子イエスについての知らせなのだと。そして、この壮大な神の救いのご計画の成就であるイエス・キリストのものとなるように私も召され、あなたがたも召されているのだと語ります。
 これが、パウロとローマの人々をつなぐ唯一の絆です。唯一の真実な救い主イエス・キリストに召され、結ばれて神のものとされている。これが20年以上の信仰歴をもってしても埋められない溝を埋めるのです。
 キリスト者の交わりとは、そのような交わりです。教会は「交わり」を強調しますが、キリスト者の交わりは、互いにキリストに結ばれている事実、ここにのみ基礎があります。それを抜きにして、いくら親しい関係があったとしても、キリストという土台がなければ砂上の楼閣です。
 パウロがかつて教会の迫害者であり、多くのキリスト者を殺していたという取り返しのつかない過去は、謝罪や償いで回復できるものではありませんし、「赦すことは忘れること」などと言うこともできません。しかし、忘れることができなくても赦せる、しかも、赦すだけでなく、同じ志を持ち、一つにつながれて共に生き働き、さらには共に労する。パウロはそこまで見ています。しかし、どうしてそんな交わりを生み出すことができるでしょうか。
 その唯一の可能性は、互いに「イエス・キリストのものとなるように召された」という信仰的・霊的な事実です。教会の交わりは、見えない事実を見る霊的な目で見なければ決して分かりません。口では「交わり」と言っても、好きだの嫌いだの、気が合うだの合わないで付いたり離れたり。「親しかったのに、こんなことを言われた」と、一言でおしまい、ということもあります。それは「肉」のレベルでの交わりです。教会の交わりは、キリストにある交わりです。だから人間の力で結ぶことはできませんし、人間が破壊することもできないのです。人が作ったり壊したりするものだと思い違いをしているから、「誰につまずいた」「つまずかせた」などという話になってしまう。
 使徒信条で「聖徒の交わりを信ず」と告白します。「聖徒の」交わりは、神のものとされた者の交わりで、人間が作るのではない。神にある事実だから「信じる」のです。
 私たちは自ら神を捨てた者、神を侮っていた者、神との交わりの破壊者です。しかし神は、御子イエスの贖いによってその深い溝である罪を赦し、私たちを御自分のものとして取り戻してくださいました。そのようにして私たちは《神のもの》とされた。それが「聖なる者」「聖徒」です。
 この神の愛と救いのみ業を「信じ」、その交わりを「信じる」のです。信じているから、人間的には破れたとしてもなお望み、深い溝にチャレンジするのです。このキリストにある命の交わりに私たちもいますし、まだ見ぬ人々もいるのです。

説教一覧(2018年度)

2018.4.1
死の涙の終わり
2018.4.8
見ゆる希望は希望にあらず
2018.4.15
キリストが充ち満ちる
2018.4.22
天に座す我ら
2018.4.29
神の恵みは現れる
2018.5.6
遺残は遠く、今は近い
2018.5.13
神を神として賛美する
2018.5.20
新しい人間の創造
2018.5.27
我らは神の住まい
2018.6.3
知らされた計画
2018.6.10
計り知れない富
2018.6.17
罪人を招くイエス
2018.6.24
とれない弾丸
2018.7.1
大胆に神に近づく
2018.7.8
御言葉を行う
2018.7.15
主の愛を味わう
2018.7.22
主は一人
2018.7.29
一人ひとりへの賜物
2018.8.5
成熟した人とされる
2018.8.12
新しい人を着る
2018.8.19
恵みが響き合う
2018.8.26
勝ち戦
2018.9.2
神の愛に留まる
2018.9.9
尊い神の秩序
2018.9.16
あなたは光の子
2018.9.23
霊による賛歌
2018.9.30
キリストが愛された教会
2018.10.7
結婚のミステリー
2018.10.14
裏切り者をも
2018.10.21
神の親心
2018.10.28
地上に敵無し
2018.11.4
神の国を前方に見て
2018.11.11
ここから見れば
2018.11.18
私たちの主、イエス
2018.11.25
あなた方の間に主の平和
2018.12.2
神の武具をまとう
2018.12.9
絶えず祈れ
2018.12.16
獄中の光
2018.12.23
見よ、救いのしるしを
2018.12.30
主である私が語り、行う
2019.1.6
朽ちない愛の恵み
2019.1.13
ひとつの福音
2019.1.20
我、ここに立つ
2019.1.27
あなた方もここにいる
2019.2.3
はるかな距離を超えて
2019.2.10
体に必要なもの
2019.2.17
福音は神の力
2019.2.24
福音を恥じず
2019.3.3
人間の不義と神の愛
2019.3.10
自由という転落
2019.3.17
終わりから今を見る
2019.3.24
お別れの挨拶
2019.3.31
波打つ大地に立つ