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福音は神の力

説教要旨(2月17日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 1:16-17
牧師 藤盛勇紀

 宗教改革者のルターがこの言葉、とくに17節の言葉と取り組んで、改めて聖書全体を読み直して《福音を再発見》しました。宗教改革者たちは何を発見し、何を強調したのか。一言で言い表したのが「信仰のみ」です。「信仰のみ」でどうなるのかと言うと、信仰のみで「義とされる(義と認められる)」というのです。それが、「信仰義認」です。
 ルターにとって、神の義とはある意味恐ろしいものでした。「神の正しさ」は、それこそ絶対です。僅かなズレもブレも歪みも許さない峻厳さがあります。その神の前に、不完全な人間がいったいどう立つことができるか。ルターは真剣に必死に追い求めていました。
 しかし、人間がどれほど頑張ってみたところで、全てをご存知の神の前に、恥じも汚れも無く立つことなど不可能なことです。私たちはとうてい神の前に正しい者として立つことなどできません。「正しい者はいない。一人もいない(義人なし、一人だになし)」と聖書は言うのです。
 しかし、ルターは気づくのです。優等生で真面目なルターは、初めは「まさか」と思います。「パウロが(聖書が)間違っているのではないか」とさえ思うのです。ルターは心ときめかせながら、聖書全体を駆け巡ったそうです。すると、やはりこれまで自分が考えていたことが間違っていたと気づきます。聖書が告げる神の義は、今まで彼や当時の教会が考えていた以上に、はるかに恐ろしいものでした。神の義とは、なんと、《不義な者を義とする》。神はなんと恐ろしく自由で、憐れみに満ちているのか。底知れず恐ろしいほどまでに深い慈しみ。
 「福音には、神の義が啓示されています」。神の義は、「福音」に啓示されているではないか。「福音」とは、この手紙全体が語ろうとしていることですし、聖書全体がそれを証している、聖書の焦点です。「福音」(よきおとずれ、喜ばしい知らせ)、それはイエス・キリストを通して現されました。このお方、この方の御言葉、この方に現わされた神の御業、その出来事です。
 パウロは続けてこう言います。「それは、初めから終わりまで信仰を通して実現されるのです」。この訳は意訳です。ここには、「信仰から信仰へ」という言葉しかないのです。この言葉を理解する鍵は、パウロがここで引用しているハバクク書の言葉です。「正しい者(義人)は信仰によって生きる」。
 この「信仰」は誰の信仰でしょうか? おそらく誰でも、「正しい者の信仰」だと読むでしょう。しかし、そう簡単でもありません。この「信仰」は、「神の」信仰と理解することもできるのです。
 近年、こうした点を考慮して、「信仰」は「真実」とか「信」と訳されるようになってきました。「信仰」は《人の》信仰だけでなく、《神の》真実でもあるからです。
 パウロが「信仰から信仰へ」と言ったのは、私たちがどのように義とされ救われ、神の前に立てるのかを、一言で言い表したのではないでしょうか。そうしますと、ここでいう「信仰」は、《正しい人の信仰》というより、まず《神の真実》、主ご自身の信実です。
 神の御前で「私の信仰」などと言えるものがあるでしょうか。あるとすればそれは何ですか? 2テモテにこういう言葉があります、「わたしたちが誠実でなくても、キリストは常に真実であられる」(2:13)。私たちは誠実、真実であることができない。にもかかわらず、キリストは常に真実であられるのです。ここで誠実、真実とは、形容詞ですが「信仰」と同じ言葉です。
 驚くべき《主の信実》に触れられ、私たちも「主よ」と応じる。この真実なお方によって引き起こされた信頼が「信仰」です。真実お方がおられ、その愛と働きにほだされるように、私たちが応答する。福音は、「真実から信仰」を生む神の力なのです。

説教一覧(2018年度)

2018.4.1
死の涙の終わり
2018.4.8
見ゆる希望は希望にあらず
2018.4.15
キリストが充ち満ちる
2018.4.22
天に座す我ら
2018.4.29
神の恵みは現れる
2018.5.6
遺残は遠く、今は近い
2018.5.13
神を神として賛美する
2018.5.20
新しい人間の創造
2018.5.27
我らは神の住まい
2018.6.3
知らされた計画
2018.6.10
計り知れない富
2018.6.17
罪人を招くイエス
2018.6.24
とれない弾丸
2018.7.1
大胆に神に近づく
2018.7.8
御言葉を行う
2018.7.15
主の愛を味わう
2018.7.22
主は一人
2018.7.29
一人ひとりへの賜物
2018.8.5
成熟した人とされる
2018.8.12
新しい人を着る
2018.8.19
恵みが響き合う
2018.8.26
勝ち戦
2018.9.2
神の愛に留まる
2018.9.9
尊い神の秩序
2018.9.16
あなたは光の子
2018.9.23
霊による賛歌
2018.9.30
キリストが愛された教会
2018.10.7
結婚のミステリー
2018.10.14
裏切り者をも
2018.10.21
神の親心
2018.10.28
地上に敵無し
2018.11.4
神の国を前方に見て
2018.11.11
ここから見れば
2018.11.18
私たちの主、イエス
2018.11.25
あなた方の間に主の平和
2018.12.2
神の武具をまとう
2018.12.9
絶えず祈れ
2018.12.16
獄中の光
2018.12.23
見よ、救いのしるしを
2018.12.30
主である私が語り、行う
2019.1.6
朽ちない愛の恵み
2019.1.13
ひとつの福音
2019.1.20
我、ここに立つ
2019.1.27
あなた方もここにいる
2019.2.3
はるかな距離を超えて
2019.2.10
体に必要なもの
2019.2.17
福音は神の力
2019.2.24
福音を恥じず
2019.3.3
人間の不義と神の愛
2019.3.10
自由という転落
2019.3.17
終わりから今を見る
2019.3.24
お別れの挨拶
2019.3.31
波打つ大地に立つ